右肩反復性前方脱臼の術後リハビリ|アメフト復帰を目指すプロトコルを紹介

右肩反復性前方脱臼の術後リハビリ|アメフト復帰を目指すプロトコルを紹介
「肩の手術後、どのように練習へ戻ればよいのか」「腕は上がるようになったけれど、接触プレーが不安」。今回は、大学アメリカンフットボールのDL選手の症例を軸に作成した、術後リハビリ計画表をご紹介します。
この計画表で大切にしていること
肩を保護する段階から、動かす・力を出す・支える・競技で使う段階へ、目的を分けて進める計画です。プロトコルとは、対応の段階と進め方を整理したものです。
対象は右肩の反復性前方脱臼に対して手術を受けた20代男性・大学アメフトDL(ディフェンスライン)選手です。前方脱臼は、上腕骨の骨頭が肩関節の前方へ外れる状態を指します。
本症例では2026年1月29日にタックルで右肩を前方脱臼しました。脱臼を繰り返していたため、2月21日に総合病院で手術を受け、3月4日、術後11日目から当院でリハビリを開始しました。5か月で練習へ部分合流し、6か月で完全合流した経過を基にしています。受傷日ではなく、手術日からの週数・月数で各段階を整理しています。
術式や追加処置によって、動かしてよい角度、筋力運動、腕で体重を支える運動、接触再開の時期は異なります。掲載種目は状態に応じて選ぶ候補であり、本症例で全種目を実施したことを示すものではありません。
術後リハビリプロトコルをご覧ください
表には「目的」「エクササイズ」「備考・フォーム」「次段階へ進むための確認」をまとめています。画像をタップすると大きく表示できます。
本記事の時系列は手術日を2026年2月21日とし、部分合流・接触への移行を術後5〜6か月の段階として整理しています。目標と確認できている結果は、6か月での練習完全合流です。


症例の時系列と復帰までの経過
- 2026年1月29日:タックルで右肩関節を前方脱臼。
- 2026年2月21日:反復性の脱臼に対して総合病院で手術。
- 2026年3月4日:術後11日目から当院でリハビリ開始。
- 術後5か月:チーム練習へ部分合流。
- 術後6か月:チーム練習へ完全合流。
術式や復帰時の筋力・可動域の測定値は、提供された情報の範囲では明らかでないため記載していません。以下の運動例は、計画表を読み解くための説明です。
段階ごとの目的と取り組み
術後早期〜4週|肩を保護し、周辺機能を維持
指・手首・肘の運動、肩甲骨運動、許可範囲のROM訓練に対応します。ROMは関節を動かせる範囲です。肩を急いで大きく動かすことより、修復部を保護しながら周辺の動きを維持することを重視します。
患部に負担をかけない体幹・下肢運動も候補となります。右手で床や椅子を押す動作、装具を外す時期は主治医の指示を確認します。
術後4〜8週|自分で動かす機能と腱板
許可に合わせて、自動介助運動から自分の筋力で動かす自動運動へ進めます。腱板とは、肩関節を安定させながら動かすことに関わる筋肉群です。
低負荷の筋収縮やチューブ運動などを検討し、肩すくめ・腰反りといった動きの補い方も確認します。本症例では、この段階で超音波・マイクロカレントを併用しました。
術後8〜12週|筋力と肩甲骨・上腕の連動
インナー・アウターマッスルの強化と、肩甲骨が上腕の動きに合わせて働く機能へ対応します。屈曲・外旋の可動域だけでなく、その範囲で動きを制御できるかを考えます。
本症例は9週から日常生活動作の制限がなくなりました。ただし、日常生活の制限解除と、強い接触プレーの許可は分けて判断します。
術後4か月から|安定性とアメフトの動作
アスレティックリハビリテーション、つまり競技で必要な動作や負荷に対応する段階へ進みます。CKCは、手を壁や床などの支持面に接触させて行う運動です。
支持面の高さを調整した腕立て、荷重移動、スタンスやフットワークなどが候補となります。右手を地面に置くスタンスも、上肢への荷重許可を確認して行います。
DLの復帰では「押す・受ける・反応する」を確認
DLは相手との押し合い、ハンドワーク、タックルなど、外から肩へ力が加わるポジションです。腕を上げられることだけでは、これらの負荷への対応を判断できません。
接触の許可後は、相手・方向・圧力が決まった課題から始め、方向変化、相手への反応、疲労を伴う場面へ段階的につなげます。肩だけで受けず、下肢と体幹から力を伝えられるかも確認します。
練習内容、反復数、参加時間、接触強度を記録し、練習直後と翌日の反応を踏まえて調整します。
完全合流は、経過月数だけで決めない
本症例では5か月で部分合流、6か月で練習完全合流しました。これは一症例の経過であり、同じ月数での復帰を保証するものではありません。
- 主治医の接触・完全合流の許可
- 痛み、不安定感、負荷翌日の反応
- 競技に必要な可動域と、動作中の制御
- 筋力、持久力、支持機能、上肢のパワー
- 接触への不安と、本人の自信
- DLの動作と、反復練習への耐性
左右差は評価材料の一つですが、健側の機能も落ちていれば差が小さくなることがあります。測定条件、負傷前の状態、競技で必要な能力を合わせて考えます。
全体練習への耐性を確認したうえで、役割、スナップ数、接触量をチームと調整します。本症例で確認できている結果は練習への完全合流です。
院長・名和大地から
肩の保護から、競技で使える身体へ
リハビリでは、各運動が何のために必要なのか、次の段階へ進むには何を確認するのかを共有することを大切にしています。選手が復帰までの見通しを持ち、医療機関やチームと方向性を合わせられるように、この計画表を整理しました。
名和大地は、柔道整復師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CPT、NASM-PESの資格を保有しています。レイラック滋賀、おこしやす京都AC、INAC神戸、京都大学体育会ラグビー部、甲南大学体育会サッカー部などのスポーツ現場で経験を積み、大手整骨院で院長を務めた後、独立してなわ整骨院を開院しました。
関連するご案内・参考資料
参考:Stony Brook MedicineのBankart修復術後プロトコル/Otleyら:肩安定化手術後の段階的な復帰評価(2022)。段階的な負荷と復帰評価の参考とし、特定術式の角度制限や運動開始時期を、本症例へ一律に適用したものではありません。
肩の手術後・スポーツ復帰をご相談ください
手術内容、主治医の指示、現在困っている動作、復帰したい練習内容をお知らせください。診療情報やリハビリの指示書がある場合はお持ちください。
王子公園駅・摩耶駅から通いやすく、水道筋商店街から徒歩1分のなわ整骨院では、肩関節脱臼後や手術後のリハビリ、競技復帰に向けた身体づくりについてご相談を受けています。神戸市灘区倉石通3丁目1-14 テイク摩耶1階西店舗。平日10:00〜20:00/土曜10:00〜18:00、予約優先制です。
本記事は症例を軸にしたリハビリ計画の紹介です。運動種目、開始時期、回復経過には個人差があります。実施は主治医の指示と身体の状態に合わせて判断してください。再び肩が外れた感じ、強い痛み、変形、新たなしびれ・筋力低下がある場合は運動を中止し、自分で戻そうとせず医療機関の評価を優先してください。
